小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

「砂」

2010.12.19 23:58

この間のリリイ・シュシュのライブでは、
リリイ・シュシュの旧曲および、
エーテル含む新曲2曲のほかにSalyuの曲をやりました。
僕がリリイ・シュシュ以降、Salyuに書いた曲の中でも
リリイ・シュシュ的な曲の中から選曲をしました。
だからSalyuとしても、そんなにメジャーな曲という風には
ならなかったんだけれども
(比較的ポピュラーなのは「プラットホーム」ぐらいかな)。
もちろんリリイ・シュシュとしてやるために、
リリイ・シュシュバージョンとしてやりきりましたよ。

選曲の中に「砂」という、Salyu3枚目のシングルの
カップリングに入っている楽曲があります。
その曲を「アラベスク」の後にやりました。
この「砂」という楽曲は、リハーサル最終日に
演奏することを決めたのですが、
ライブ当日、久しぶりの方から電話があったのです。

その人はマエキタミヤコさんと言って、
ap bank立ち上げの頃いろんな意味でお世話になった人で、
彼女は、例えば高尾山に圏央道のトンネルを掘ってしまうことを
なんとか阻止できないだろうか、というような運動をしたり
(高尾山は生態系の意味でも多様な山なので、
わざわざトンネルを掘らずともよいのでは、という考えに基づき、
昔の行政が決定したことを遂行するというような事に対して
「ちょっと待った、引き返す勇気も大事じゃないか!」
と声を大にして活動をしたりしている)というような方なのですが、
久しぶりの彼女の電話の内容は、
諫早湾の干拓事業についてのことでした。

知っている人もいると思うけど、知らない人のために簡単に言うと、
諫早湾は日本でも有数の干潟が広がって、
貝や海苔の養殖が盛んだったんだけれども、
高度経済成長期に防災と農地造成を目標に
農水省や地元の自治体によって干拓事業を始めて、
堤防水門を閉鎖して、干潟が消滅してしまったのです。
干潟が消滅したことにより、漁業に被害が出たり、
環境や生態系に悪影響を及ぼしてしまったという訳です。

で、そのマエキタさんの電話というのは、
諫早湾干拓事業で開門調査を命じた福岡高裁判決に対して、
菅直人首相が上告を断念したことを伝える電話でした。
要するに、諫早湾の干潟をせき止めるギロチンがあったんだけれども、
開門が決まったのです。

長くなりましたので、続きはまた明日。




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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。