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小林武史 × 伊勢谷友介
俳優として活躍する一方で、仲間たちと「リバースプロジェクト」という活動をしている伊勢谷友介さん。
「環境を考えることは新しいモラルを模索すること」という伊勢谷さんが考える、モデルケースとしての「村」とは?
updata:2009.12.12
第3回 「カッコイイ」を入り口に
小林 すでに、そうなりつつあるけれど、これからはますます見かけ倒しでは通用しなくなると思う。伊勢谷くんたちのリバースプロジェクトも、信頼をいっぱい作っていくことが一番大事だね。
伊勢谷 そうですね。僕らとしては、会社とはお金を稼ぐための存在ではなくて、社会において、たとえば水槽のなかにある循環器のようなものになればいいな、と思っているんです。ただ正直に、自分たちが正しいと思うもの、残すべきものだったり、継続すべきものに対して執着していきたい。
だから、なるべく自分で動いていきたいんです。「THE SPIKE SHOW」という、建築廃材を再生させるプロジェクトをやったときにも、時間のあるかぎり現場にいって、自分で廃材をとりました。もちろんアイデアも出しますし。
小林 でもさ、そういう活動って、カッコいいよね。伊勢谷くん自身がカッコいいというのもありますけれど(笑)。
カッコいい、を入り口に
伊勢谷 今ある、「エコロジーって、クリーンでグリーン」というイメージから脱却しないかぎり、ずーっとこのまんま、どこかに印刷された理念として終わってしまうような気がして、すごく嫌で。
小林 ほんと、そうなんだよ。
伊勢谷 僕らは環境にまつわるアクションを、ちゃんと社会の中に成立させたい。僕らの会社みたいなものが、そうした意志の権化となりたいし、その会社があることで、廃材を使って何か価値のあるものを生み出せれば、地球も、ゴミを提供する人も買った人も、誰も損をしない。そうした循環するシステムをすべての形で実現できて、僕らの社会にあるだけで、人間的にも環境的にも、誰もが得する存在になれたらいいな、と。
それが僕の中での正直だし、最大限の社会に対する愛情だし、身近な人に対する愛なんです。リバースプロジェクトがいま言ったような方向で、10年でも存続できたら、何かの形になるんじゃないかと思って。
リバースプロジェクトでは、衣食住、水、エネルギーという、先ほどお話しした「村」を構成するすべての要素で活動をしたいんですが、いきなり全部を立ち上げるのは無理なので、まずは「住」と「衣」ができて、ちょっと「食」も始めているところです。
「食」では友達のフジモトベーグルというおいしいベーグル屋さんと一緒に、形が悪くて廃棄されていたものを、スライスして違うかたちで提供しよう、というものなんですが。
小林 「住」は廃材を使って家具を作ったりしているんだよね。
「衣」はどういうことをしているの?
伊勢谷 まず「衣」について、僕らはメイングラフィックと呼んでいるんですが、スタンスをいちばん表現できる形を探しているところです。
最近行ったのは、親族かとても近しい人が亡くなられて、どうしても捨てられない服があって、想いがあって、という方をwebで募集しました。残された洋服を僕らに送ってもらって、リフォームをして、戻す。それを着ているところをグラフィックに残す――ということをやっています。
トライベンティの中川さんはご存知ですか? 彼が10年前から継続してやっている「東京リサイクルプロジェクト」があって、完全にコンセプトが合ったので、協力してもらって、第一弾として、野球をやっていた(中学校の野球の先生だったらしいんですけど)お父さんの残した服で、三姉妹の服を作りました。 第二弾はギャル・バージョンにしようと思っていて。男の子二人のお母さんからの依頼で、彼女の亡くなったお父様の服で、彼女の息子達の服を作ろうというものです。そういうことを衣では始めています。
あとは、オーガニックコットンを使ったTシャツの製作。表面的にはマークがあるくらいなんですけど、裏側には赤いインクで、「我々は癌である」と書いてある。「今までこういうことをやってきたけれど、そろそろ良性の癌に移行すべきじゃないか」というメッセージで、一緒に「そのためにまず宣誓すべきは3つあります」と書いた文章も入っている。そこに署名してもらって、現金書留で送ってもらって、僕らが確認してTシャツを送り返すことをやろうと思っています。
それから、「住」のTHE SPIKE SHOWでは、家を建てかえるために壊される過程に僕らが入って、宅地がエンプティになった時に、そこから出た廃材で作った家具を運んで一瞬で撮影して、またさよならするということをやりました。これは誰にも迷惑がかからないし、お金もほとんどかかってない。 また、最近では廃材だけでなく、生分解性プラスチックなどの新素材にもトライしています。
伊勢谷友介
1976年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部 修士課程修了。大学在学中の1998年に「ワンダフルライフ」(是枝裕和監督)でデビュー。以後、映画、ドラマなどで幅広く活躍している。2002年には長編映画「カクト」で念願の監督業への進出も果たした。2008年からさまざまなジャンルで活動をおこなう、リバース・プロジェクトをスタート。志をともにするクリエイターとのプロジェクトを進めている。
リバース・プロジェクト
http://www.rebirth-project.jp/
(撮影/大城 亘 構成/編集部)