小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

ムンバイの続き

2010.11.17 23:48

この前はカーストの話の前で終わりましたが、
ムンバイの町を行き来していて、思うことがありました。

正直言って、インドの田舎の方でもスラム街でも、
ここまで明らかな貧しさ且つ混沌を見たのは
少なくとも僕が今まで見てきた国々
(ベトナム、タイ、中国少数民族、
ブータン、ラダック、カンボジアなどなど)、
いろいろ行ったなかで最もディープなものでした。

ディープっていう意味、解ってもらえるかな?
つまり、臭いも密度も壊れ方も秩序のなさも、
まぁつまり全体的にぐちゃーという感じなんです。

だけれども、それはどこの国に行っても同じ思いだったのですが、
これだけのぐちゃーっと感でも、人々は活き活きとしているのです。
少なくともそう見えるのです。

平日でも学校に行っていない子供はわんさかいるし、
(なんでもスラムのなかでも数十%の人が出生届を出していないとのこと)
ただただ通りでぼーっとしている人も、
日中には軽く35度ぐらいになってしまう町なんですが、
その通りでただ座っているおじさんおばさん、もしくは寝ている人、
噛まれたらマジで危険だと思われる、目がどろんとしている犬たち。
そして、彼らにとって神聖とされる牛たち。
田舎の方では、ヤギ、羊、ついでに象まで車と共存していますが、
とにかくそんな全てが入り混ざっているのです。

おまけに事故だか病気だかで、自分の体が不自由なことや、
食べる物が欲しいという仕草を、
車のドアをこつこつ叩きながら、それをアピールしてきたりもします。

ここまで書くと、何が活き活きとしているのか、と思ってしまいそうですが、
でもおそらく、あまり悲観的になってなんかいない、
というのが解るんだよね。ちっとも欝的でない。
実際自殺率は、全然低いらしいし。
まぁ出生届を出していない率が高いので、大枠がそもそも不確かなのですが。

でね、ここからなんですけれども、
長くなったので、また今度。



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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。