小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

吉田松陰

2012.01.14 23:49

今日は山口県の萩に来ています。
前からアルケッチァーノの奥田シェフの紹介で
来ることになっていたのですが、
その奥田君とも今年初めて会い、
今日は休日だったけれど、市場を見学をしたり、
道の駅として全国でもトップ10クラスの賑わいを
みせているシーマートを見学したり、
行政の人といろいろ話したりしました。

僕は初めて萩に来たんだけれど、
なんだかいろいろ奇遇に感じました。
というのは、この町は幕末のひとつの舞台なんですよね。
長州藩としても有名ですが、
なんと言っても吉田松陰という人がすごいんです。
改めて知ったけれど、わずか30年足らずの人生で、
しかも時の幕府政権によって処刑されるという最期だったのです。
その後、彼の影響を受けたと思われる
「長州ファイブ」と言われる5人が、
日本の近代化に大きく貢献することになります。
その中の一人が初代内閣総理大臣、伊藤博文なんです。

吉田松陰はなぜ処刑になってしまったのかと言うと、
幕府批判なんです。
幕府は日米通商条約を、時の天皇の了解を得ずに作り、
尊王攘夷、つまり簡単に言えば、
天皇を大切にする考え方に属していた
吉田松陰たちは、反旗を翻した訳です。
でも全体的には、みんなもう開国する以外にない
というムードだったんです。
普通に考えれば、幕府も吉田さんたちも
同じ方向を見ていると言えば見ているわけだから、
なんで反旗を翻すんだと思うし、
少し複雑な感じがするんだけれど、
今日こちらで聞いた話では、吉田松陰は、
簡単に開国することの危険性を感じていたようで、
つまり開国するにしても、日本人の、
この国の守らなければならないものを、
大切にしていくということを考えていたようです。
3.11以降のこの国の進め方にも、
同じようなことが言えるなと思いました。

萩における食のことは、可能性は大ですが、
いろいろコンセンサスが必要です。
詳しくはまた進んだら報告しますね。
でも、萩は他にない面白さを持った町です。



アナログとデジタル

2012.01.13 23:53

経済の国際競争力というのも大事なんだろうけど、
その前に人々の営みがあってほしいと思うのは、
当然の話だと思うのです。

ブータンの国王が日本に来た時に、
あれだけニュースになったというのも
日本人がどこかで営みこそがベーシックに大切なのだと
解っているからなのだと思うのです。

資本主義のなかで、売れるものを
いよいよ金融に見出してから
先が見えてきていると思うんだけれど、
とにかく経済が僕たちのいま現在やこれからの喜びを
決定してしまうなどと言うのは、
せっかく授かった命がもったいなさすぎる、と思うわけです。
ちゃんと反応して生きていきたい、生き物として。

極めてまともなことを書いていると思うけれど、
なんの前触れもなく書くと、
「なんか小林さん、遂に新興宗教に目覚めたかな」
と思われそうだけど、違います。
でも、新しいコミュニティーのあり方は想像しちゃうね。
「耕す」も多分増えていくと思うので、
これからそういうコミュニティーを増やしていけたらと思います。

そういえば、この間
「一番お世話になっているもの=太陽」
みたいな話をしました。
「ありがとうございます」みたいな対象は、
昔から変わってないんだよね。
そして僕たちは、どうやってもアナログなものだし、
物語としては、
「デジタルが自分で考えていく装置となった」
みたいなことは、SFとしては面白かったけれども、
それももう食傷気味だし。
むしろアナログだということを自覚していたら、
デジタルは必要な分だけ上手に便利に使えるんじゃないかな。

Salyuのアルバムが、ほぼ完成しました。
ぜひ聴いてみて欲しいです。
忙しい中だったけど、
いろんな局面で集中して作ったアルバムです。
しかし、僕もそうだけど、
Salyuも自由だな・・・と、改めて思いました。





耕す新年会

2012.01.12 02:00

今年初めてというよりも、
かなり久しぶりに木更津の「耕す」に行ってきました。
正確に言うと、新年会を兼ねたミーティングでした。

いよいよ展開が大きくなろうとしている「耕す」の
今年から来年への緻密なミーティングができました。
それもそうですが、面白かったのは、
その後の新年会で紹介されたアルバイトの若者達で、
一緒にもつ鍋などをつつきながら、いろんなことを話しました。

関東の農業も放射能でいろいろ言われているけれど、
「耕す」はきちんと計測していて問題ありませんが、
風評被害を含むネガティブな感覚が、
いろんなところで沸き起こっているようです。
だけど、その4人の若者は、
実に明るくさわやかで、活き活きとしていました。

お金、つまり収入の多さという事だけではなくて、
コミュニティーとしても「耕す」などを通して
いろんなところと繋がっていけるという想いが
彼らにはしっかりとあるような気がします。

あと、最近夕日を見ながら
うちのスタッフと「つくづく太陽にお世話になってるね」と
話し合っていたのですが、地球上の全ての生き物が
最もお世話になっている太陽の恩恵を
日々感じて仕事ができるのが農業だと思うんだけれど、
そんな事を話していたら、彼らも大きくうなずいていました。

昨年末「カンブリア宮殿」で、
TSUTAYAのオーナーである増田さんが出ていたのですが、
僕は増田さんとかれこれ20年近く懇意にさせてもらっていて、
大好きな先輩なのですが、さすが増田さん、
すごく素敵なことを言っていたので
見た人もいるかもしれないけれど、紹介しますね。

増田さん曰く、人間には「頭」と「心」と「体」があるのだけれど、
最近、頭を使うことが多くなっている。
だけど、頭で考えるという事は、守りに入る事が多くて、
それに結局自分自身を一番守ってしまうということになりがちだと。
で、心が感じるということが大事で、
増田さんの場合は、お客さんにとって、どういったことがあると
そこに喜びが生まれるのだろうかという事を直感使って、
つまり心で感じようとしている、と。
「頭」と「心」の関係を別の例で例えると、
街中で、おばあさんが倒れていたとする。
頭で考えるのは、いま助けなければ、
周りの人が見ている前で恰好悪いだとか、
結局自分の見られ方からくる発想。
心で感じるというのは、
本当におばあさんのことを考え、感じて行動すること。
つまり、心を鍛えていかないと、本当に大切なこと、
必要なことに向かって行ったり、向き合えたり出来なくなり、
結局、頭を使って計算しているようで、
ただの保身にしかなっていない・・・と言うようなことでした。

Food Relation Networkの中で、
だんだん少しずつ、心が機能しているような気がします。
もちろん音楽で演奏することで、心が機能していくのだけれど、
どうしても情報化されてしまう事も多いのでね。




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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。