小林武史によるダイアリー。日々の出来事や、現在進行中のプロジェクトについて、今考えていることなどを綴ります。

南三陸町

2011.03.19 19:47

朝、3時に炊き出しのために、宮城に向かいました。
今回の被災地の中でもかなり被害の程度が
ひどい場所のひとつ、南三陸町です。
そこまでの道中には、
それほどの被害が見れた訳ではなかったのですが、
何か少し変な空気が漂ってました。
実際、建物が歪んだり少し傾いたりしていたんでしょう。
夜も明けてきて、ガソリンスタンドに並ぶ車の
長蛇の列を何度も見ながら
そんな緊張した町をいくつか通りすぎていきました。

朝8時には現地についてしまって、
約束をしていた町の公民館に行ったのですが、
少し早すぎたようでした。
公民館で事情を確認した後で、海のほうに車で向いました。
緩い坂を下ってカーブを曲がり終わったら、
もちろん予想はしていたんだけど、
実際に目で見て感じるその光景は、
とんでもないものでした。
人間社会の断片がぐちゃぐちゃに散らばっていて、
それは元々、町があったこともまったくわからないほどでした。

1万8千人ほどの人口の中で
8千人ほどが死者と行方がわからない人だと、
公民館の館長が話してくださいました。
圧倒的な無力感が漂っていました。

視察、炊き出しを終えて岩手の前沢にいます。
今後の長い支援のプログラムをみんなで考えつつ終了。
明日は更に気仙沼に行く予定。




山形入り

2011.03.19 10:28

結局、僕も山形に入りました。
昨日、飛行機で庄内空港まで来て、
昨年のapbank fesにトークゲストで出てもらった
今話題の奥田シェフ、彼が率いる山形、鶴岡のレストラン
「アルケッチァーノ」に到着しました。

彼はそのとなりに「イルケッチァーノ」という
カフェレストランを経営していて、
彼らの厚意のおかげで、ここでしばらく、
炊き出しの本陣を構えることになりました。
奥田君とは、去年出会ってから、凄いレゾナンスが起こっています。
強力なエコレゾです。詳しくはいずれ、、です。

昨日夕方、機上にいたのですが、とても晴れていたので、
途中、福島の猪苗代湖あたりの上空で
遠く太平洋側がおぼろげながら見えていました。
何となく、ぼんやりと雲が覆っていて、福島原発の存在を、
勿論認識できるほど見えてはいなかったんだけど、
その存在を上空からしばらく追っていました。

雪景色の奥羽山脈や小さな村落が作り出す模様は、
夕方の斜めの光を受けて本当にきれいだったけど、
その絵の奥に強すぎる何かが、自然界の中で
脅威を放っていることをほんの数分だったけど、感じていました。

エネルギー

2011.03.18 13:13

僕の周りには、正直元気な人間もいるし、落ちこんでいる人もいるし
様々だけれど、今回の震災の影響が長引けば長引くほど
必ず重苦しい感じになっていくと思います。
もう実際にそうだし。
みんな、とにかくうっかり沈み込みっぱなしにならないようにしてください。
何かと繋がっていた方がやはり活性化すると思うので。

ap bankとkurkkuの何人か、昨日山形に入って
今日から被災地へのボランティア活動の検討を始めます。
本当は僕も昨日行くはずだったのですが、
諸々の理由で諦めました。

山形に入った人達は食、
農業から被災地を支援しようとする人達と繋がっています。
すごいコネクションを持った人達です。
他にも優れたボランティア団体との連携も取れています。

本当は昨日ぐらいから、どんどん動いて行こうと考えていたし、
いまもまだ山形に行った彼らはそう思っているかもしれませんが
なにしろ原発の状況が見えません。
これはしばらく続きそうです。
僕は自然の脅威には本当に圧倒されてしまったし、
同時に、受け入れていくしかない生き物の宿命も感じるんだけれど
そこに得体の知れないパワーを秘めた
ものも存在しているかもしれないと、すごく違和感を感じます。
本当は違和感なんて生易しいものではないけれど、
被災地の人のことを考えると使える言葉も限られるし、
もっと言えば何も言えない。
少なくとも言える段階ではない。

だけど、この国のエネルギーの問題は
前からあったのは本当だと思うのです。
こんな時に言うなって思うかもしれないけれど、
今までもずっと批判をしながら
結局は飲み込むしかない状況が続いていたんだと思います。
だから、今まだ喉元にあるうちに、
飲み込んでしまわないうちに、
みんなともう少し考えたり感じたりしたいと思って、
緊急企画を始めました。
できれば長く続けていきたいと思っていますが、
この企画のタイトルもまだ決定しておりません。
冒頭にいずれつけようと思っているコメントがあります。
それだけ先にここで掲載します。

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喉元すぎたら忘れてしまいがちな僕らだから、
いまから始めようと思いました。

自問自答を含めたこの問いかけです。

「僕らはエネルギーを選べるのか」

食べるものも、着るものも、住むところも、旅行場所も、
移動手段も(手段が一つしかないのは別として)選べるのに、
僕たちは原子力エネルギーを使わないことを選べない。

いい大人なのに。

何故そうなのか、変えることはできるのか。
他の国ではどうなのか、代わりのエネルギーとは?
出来るだけ難しくなく、電力会社にも攻撃的じゃないやり方で
色んな人と考えてみたいと思っています。

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昨日田中優さんと改めて対談をしました。
知ってたこと、いままで知らなかったことなんかも含めて
この日本のエネルギーの周辺には、えーっと思うことがいくつもあります。
だけど、とにかく興味を持てるように解りやすく、
みんなに参加していけるようなことも考えています。



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小林武史

音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。映画『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、など、手がけた映画音楽も多数。2010年の映画『BANDAGE(バンデイジ)』では、音楽のみならず、監督も務めた。03年、Mr.Chilrenの櫻井和寿、音楽家・坂本龍一と自己資金を拠出の上、一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか、「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざな活動を行っている。