第3回 『スワロウテイル』の出会い
◆桑田佳祐さんのスタジオで
- 小林
- 『BANDAGE バンデイジ』の公開があるから、ここのところ岩井君と一緒に取材されることが多かったよね。となると、やっぱり『スワロウテイル』のことが出てくるし、それは光栄なことだな、と思ってるんだよ。なんといっても、僕たちの活動のひとつの「山」だったし、それが今に至るまで残るものになっている、ということが。
- 岩井
- 最初の出会いはふたりとも20代の頃だったんですよね。桑田佳祐さんのソロアルバムを小林さんが作っていて、僕はプロモーションビデオで携わっていた。
- 小林
- 岩井くんは、まだ学生だったんじゃない?
- 岩井
- いえ、学校を出た年ですね。 僕のほうは初めて会った時の印象が強烈でした。桑田さんのスタジオにお邪魔して、撮影させてもらったときに、小林さんがとても桑田さんに信頼されていて。あの頃、まだ20代ですよね?
- 小林
- うん。
- 岩井
- 若い人なのに、プロデューサーとしてすべてをオーガナイズしているのがすごいな、と、なんだか感動しました。
◆そして、『スワロウテイル』へ
- 小林
- 初対面のあとも偶然の再会まで、数年のブランクがあるんだけど、その間に『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』や『Love Letter』を観て、一気に僕のなかで岩井俊二がブームになっていたんだよ。
- 岩井
- そうしたら都内某所でバッタリ会った。
- 小林
- それまでに知人からも「Charaが今度、映画に出るんだよ。その岩井という監督がすごいんだ。監督したテレビドラマ(『打ち上げ花火〜』)が、日本映画監督協会の新人賞を取ってね」と、なんだかゴワゴワした感じで、インプットされて。
- 岩井
- すごいタイミングでした。
- 小林
- そうしたら、ある人を通じて、「岩井君が『スワロウテイル』の音楽を小林さんがやってくれないだろうかと、言っている」というのを聞いて。
それであらためて会いに行ったんだよね。
◆映画のための音楽を探して
- 小林
- その数年前に、ニューヨークのウォーターフロントというアナログのスタジオに行ったんだけど、そこにあるのはメジャーリーグ的な高度な技術の寄せ集めじゃなくて、もっと地面を通じていろいろなものが混ざり合って伝わりあうようなコミュニケーションだった。
そういうものを音にするカッコよさっていうか。
そのニューヨークのスタジオのことを、岩井君から円都(イェンタウン)という街の構想を聞いたときに、思い出して、「ああ、もうそれだ!」と思った。最初から、僕の中に一個、すごく見えるものがあったから、その後やや紆余曲折はあるんだけれど、僕としては最初のイメージのまま走れたから、幸せな時間だったよね。 - 岩井
- 僕にとって、一番大きかったのは、MY LITTLE LOVERの曲。 当時、ちょうどデビューしたてで、ラジオで聴いていたんですけど、『スワロウテイル』の音のイメージとシンクロしたんですよ。 「この感じがよく似てる」と思って調べたら、行き着いたというか。
- 小林
- 結局、MY LITTLE LOVERも『スワロウテイル』に一曲、挿入歌みたいな感じで「YES」という曲を入れて。そういえば、「YES」と「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」、同じ映画から2曲ともオリコンの1位になったんだよね。
- 岩井
- なかなかないことですよ。
バンドが出てくる日本の音楽映画において、すごい作品がなかった時代ですからね。みんな肝心の音楽の部分で失敗してるような感じがして、ある種の鬼門というか(笑)。
そこを強行突破したかったんですね。
◆「音楽映画」の難しさ
- 岩井
- 「映画に出てくる架空バンド」となった瞬間、そこに高いクオリティの音楽を持ってくるのは難しくて、それを無理に登場させると、なんだか説得力のないものになってしまう。
こうなってくるともう、普通の音楽では難しい。そこそこ、よく出来ているくらいだと、みんな疑ってしまって、偽物に感じやすいから。
そうさせないためのハードルの高さというのがあって、だから『スワロウテイル』で、実際にチャートで1位をとるという形で返ってきたのは、ほんとに、すべてがうまくいった証だと思うんです。
それから片方が英語で話しているのに、片方は日本語で受け答えをするというような、外国語の壁もある。『スワロウテイル』では、言葉の壁と本物の音楽という二つに対する挑戦をしてみたかったんです。
だから、小林さんに音楽を担当してもらうことに非常に大きな意味があったんです。
(撮影/大城亘 構成/編集部)
| ◆ 岩井俊二(いわい・しゅんじ)プロフィール 1963年生まれ。宮城県出身。映画監督、脚本家、プロデューサー。 横浜国立大学卒業後、1988年よりプロモーションビデオとCATVの番組制作をスタートし、その独特な映像世界が注目を浴びる。 1993年、テレビドラマ『ifもしも~打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で日本映画監督協会新人賞受賞。『Love Letter』(1995年)で数々の映画賞に輝く。そのほか『スワロウテイル『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』など話題作多数。最新作としては、NYを舞台にしたラブ・アンサンブル映画『NEW YORK, I LOVE YOU』(主演:オーランドブルーム/クリスティーナリッチ)がある。(2010年2月公開) |
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