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ap bank fes'10 Special Talk 宮本浩次(エレファントカシマシ)

ap bank fes'10 Special Talk 宮本浩次(エレファントカシマシ)

ap bank fes'10参加アーティストを迎えての特別企画、第四弾!!
「ジャンルやカテゴリーや世代というものを越えていく」。ap bank fesがずっとやろうとしていたことが、新しい形で実現しようとしている今年、エレファントカシマシの登場する意味は大きいと話す小林武史。その真意は? 久しぶりの再会を果たした小林武史と宮本浩次の新たなレゾナンスに期待が高まる対談です!

updata:2010.07.16

第2回 60歳になった宮本君の歌を聴きたい

ap bank fes'10 Special Talk 宮本浩次(エレファントカシマシ)

小林 今年はap bank fesでエレカシの他の3人に会えるのも、すごく楽しみですけどね。芸風は変わっていないんでしょ? サディスティックで(笑)

宮本 変わってないです(笑) ap bank fesに僕らのようなバンドが出演するというのは、新しい感じなんですよね?
小林 新しいですよ。これもね、いろいろな経緯があるのだけれども。 環境のこととか未来のこととかを考えたときに、なんていうか、いろんなことが繋がっている、という感覚を前提にするということを僕は考えていて。それは、自分たちの今や歴史を消費してしまうのではなくて、過去や未来、今の広い範囲と繋がることで、リサイクルというわけではないけれど、残していけるものがあると思っている。そういう意味で、音楽でもジャンルやカテゴリーや世代というものを越えていくということを、ap bank fesではやろうとしていたんです。 その時にね、バンドってひとつの社会みたいなものじゃない? そこを尊重していくとやはりインディペンデントになるというか......、連なりみたいなものを表現するのはなかなか難しいと僕らは判断したんです。だから、まずはBank Bandというものをターミナルにして、歌い手を呼ぶというスタイルにしていた。 でも今年から、満を持してというべきか、方針を変えたんですよ。ずっと先人たちとのやりとりをメインにやってきたから、今度は新しい人たちや異質感がある人達と一緒にやってみたいという、ある意味正常なプロセスに、今年はチャレンジしようと。 2ステージにして、バンドには基本的にバンドの演奏に任せる。でも、そこにも繋がりをもって、関わりをもって、ひとつの流れを作れるんじゃないか。本番前に櫻井とそう話していた。今回のこの対談企画もそのひとつなんです。僕と櫻井がそれぞれ、若手とベテランの方々とまずここで話をして繋がりができたら、ということでね。で、今年は宮本君にも来ていただけたわけです。
宮本 呼んでいただいて本当に嬉しかったです。

小林 今回、宮本君は最終日でしょ。最後にエレカシがくるというのは、僕も櫻井もふさわしいと思っているんだよね。この数年、エレカシの活躍を外から見ていて、いい感じになってきているなと思ってたし。

ap bank fes'10 Special Talk 宮本浩次(エレファントカシマシ)
宮本 ほんとですか?

小林 エレカシとしては、第三期か、第四期というべきか......。デビューしてからどんどん人気が出ていって、安定した人気も得てベテランの域に達して、そしてまたこう静かに勢いがついてきているな、という段階でさ。もうエレカシといえばある意味ひとつの歴史を築いているからね。

宮本 いやいやいや。

小林 エレカシは一生モンだよね、間違いなく。60歳くらいになった宮本君が歌う数々の名曲を聴きたいもんね。

宮本 僕らも長く一生懸命やってきていて、まあ一生懸命はみんなそうだと思うんですけどね、僕らにはメンバー4人が中学校や高校の仲間でずーっとやっているというストーリーがありますから。自分たちとしては、相変わらず、というところなんですけど、でもそういう部分を信頼してもらっているのかな、というのも感じますね。ファンの方々もほんとうに長く熱心でいてくれる方が多くて。嬉しいですよね。
小林 新しいファンも多いでしょ?

宮本 どうなんでしょう。......どうなんですかね?(笑)

小林 僕の周りには宮本君のファンがすごく多いよ。 話は変わるけど、浮世絵はまだたくさん持ってるの?

宮本 はい、持ってます。

小林 儲かったお金をかなりの勢いで、浮世絵につぎ込んでる男だからね(笑)宮本君が浮世絵に急激にはまった頃は、浮世絵相場が変わるほどだったって聞いてるよ。宮本君が急に買いだしたから、値があがっていったって(笑)

宮本 (笑)

小林 なんかね、宮本君の中には、東京の下町というか、東京を通り越して江戸みたいなもののイメージがオマージュとして入り込んでいるんじゃないかなと思ったことがあるんだよね。富国強兵をうたっていた戦前戦後の、欧米に対して列強の仲間入りを目指していた時期のような、ちょっと昔の日本のあり方みたいなところがね。 僕らがap bankで環境のことをやりだしたころによく話していたのは、東京とか江戸って世界に冠たる環境都市だったってことなんだけど。江戸って、世界でもあまり例がない、面白い佇まいがあったんだと思うんですよ。 宮本君にもなんだかそこに通じるイメージがある。下町散歩はまだよくしてるの?

宮本 そうですね。好きなんですよね。
ap bank fes'10 Special Talk 宮本浩次(エレファントカシマシ)

小林 江戸の中に西洋のものが入り込んできて、不思議に異化したもの、みたいなものが好きなんじゃないのかな。 人間て、適当にずれていたり、ちょっと奥に入っちゃったり、そういう陰影やずれみたいなものがそれぞれにあって、そういう部分が個性であって愛しいと感じる部分だったりすると思うんだよね。 音のバランスにもそういうところがあって、きちんと組み立てて無駄なものを排除していくだけではだめで、例えば手打ちそばのむらがある部分が美味しい、というような感覚が必要だと思うんだよね。 だから江戸みたいなものをなんとなくわかる、そういうことへのオマージュ、憧憬みたいなものって、僕はすごく信用できるものなんじゃないかなって気がする。そういうのがエレカシにはあって、他のバンドにはなかなかない。
―― 宮本さん自身がスラッピーだということですかね。

宮本 "スラッピー"?

小林 「最高にスラッピーだ」という言葉があるんだけどね。 ヘンリー・ハッシュというプロデューサーが、YEN TOWN BANDのミュージシャンを評して僕に言った言葉なんだけど。 決して「うまい」とかじゃなくて、要するに、「ハートがある」ってことなんだよね。 だからこそ今回、僕も櫻井も最終日にエレカシがパフォーマンスをするというのがふさわしいと思っているし楽しみにもしているんです。ベテランの域に達して更に元気になってきているしね。

宮本 身体のこととなどを考えると、若干ね、昔と違うな、無理がきかないなと思うこともありますね。ミック・ジャガーとか見ていると、身体が強いんだろうなと思いますよね、あのパワーは凄まじい。僕なんて昔のビデオ見ると、顔も動きも今と違うなーと思ったりして、この歌い方いつまでできるんだろうかなんて思ったりしますけど(笑) でも、ほんと、いくつまででも、できるといいなと思ってるんです。さっき小林さんが60歳になっても宮本君はやってると思うって言ってくれて嬉しかったんですけども。何万年という時の流れのなかでね、人間が生きるのなんて、たかだか百年程度ですよ。でも偉大な人の名前は刻まれているわけでね。これからもそうだろうし、僕も頑張りたいなと思いますね。

小林 いや、いいところにきているよね。(エレカシは)いい場所にいるなと本当に思う。 なかなか真似できないよね、エレカシっていうのは。影響を受けている人はたくさんいるだろうけど、なかなか、"ポスト宮本"といえる人が現れない。やっぱりユニークなんだよね。

宮本 でもね、小林さんの音楽センスこそ、唯一無二じゃないですか。アジアでもヨーロッパでもアメリカでもなく、クラシックでもなく現代なんだけど、古く懐かしくもあるという。それこそYEN TOWN BANDにしても、日本的なんだけど日本的じゃないというか、ヨーロッパでもないというか。
宮本 僕は歌手だから、小林さんのピアノがどんなに素敵なピアノか、どれだけシンガーが気持よく歌えるピアノか、っていうのがわかりますからね、天性のものと言う以外なにもないと思います。全部を委ねられるんですよね。 僕は歌手だからハッピーですよ、小林さんのピアノで歌えてね。みんなは歌手じゃないから(笑)あ、でも、リスナーのみなさんもハッピーでしょうね。 (編集部に向かって)これ、書かないでくださいよ、本人前に、こんなことばかり繰り返して、恥ずかしいですから。

―― (笑)

小林 今はプロデューサーとアーティストの関係じゃないけど、時間がたって、僕らの長い音楽人生のなかで、また、一瞬すっと交わることができて嬉しいですよ。違う段階で会っていたら違うベクトルもあったんだろうなと思うくらい、宮本君と僕って意気投合できるところがあると思うんだよね。お互いぶっちゃけキャラだしね(笑)今日ひさびさに会っても、やっぱりそうだなって思いました。ap bank fesで会えるのを楽しみにしています。

ap bank fes'10 Special Talk 宮本浩次(エレファントカシマシ)
宮本浩次(エレファントカシマシ)
宮本浩次(エレファントカシマシ)

1981年、中学のクラスメートであった宮本浩次・石森敏行・冨永義之の3人で結成。86年に、冨永の高校の同級生だった高緑成治が加わり、現在のエレファントカシマシとなる。88年、アルバム「THE ELEPHANT KASHIMASHI」、シングル「デーデ」でデビュー。カリスマ性あふれる音づくりと圧倒的なライブパフォーマンスで、熱烈な支持を得る。以降、精力的なライブ活動を続け、2009年にはバンド史上最多の夏フェス出演を果たす。10年3月には初の野音ライブDVDを、5月にはシングル「幸せよ、この指にとまれ」をリリース。また多くの夏フェス&イベントに出演予定。
http://www.elephantkashimashi.com/

(撮影/水野嘉之 構成/編集部)

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