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小林武史 × 矢沢永吉

小林武史 × 矢沢永吉

5年目を迎えた、ap bank fes’09のシークレットゲストとして、圧倒的な存在感を示した、矢沢永吉さん。
新しいアルバム『ROCK'N'ROLL』をリリースし、驚くほどのパワーで走り続けている矢沢さんに、「ap bank fesでの矢沢さんは完璧だった」と語る小林武史が、待望のインタビューをしました。

updata:2009.09.25

第9回 「完璧じゃないけど、間違った生き方はしていない」

最終回は、eco-reso web編集部から、矢沢さんにとってお金についての質問をさせてもらいました。「あの世にお金は持っていけないんですよ。ある時期にものすごくはっきりわかったんですよ」と、矢沢さんの生き方の話になりました。


編集部 最後に、お金についてうかがいたいんですが。

矢沢 お金? なんでお金なんだよ(笑)。

編集部 ap bankはお金を新しい形で、いろいろな人たちに融資しているんですが、よく小林が「お金は道具に過ぎない。必要だし大事だけれど、道具であって、使いかた次第なんだ」という言いかたをするんです。

今、不況になったこともあって、必要以上に「お金」が意味するものに、みんなが振り回されている気がします。でも大事なのはその先にある、「何をやりたいか」ではないか。矢沢さんがおっしゃってきた「お金が欲しい」も「上へ行きたい」も、その先にあるものが大事だという話ではないか、と思うんです。
矢沢 実は、僕も知らず知らずのうちに、小林さんと同じことを言っていましたね。
20代の頃の矢沢が「上に行きたい、金持ちになりたい、成功したい、認められたい!」と言っていたのは、わかりやすい言葉だから使ったんだと思う。それがね、このぐらいの歳になって、はっきりとわかるんですよ。

最近、小林さんと同じようなことを矢沢はよく周りに言っているのね。それは「ああ。もう60(歳)だな。あと何年、活動できるのかな。今と同じテンションでできるのは5年くらいかな。それからスローダウンさせながらもう5年で、10年はできるのかな。10年できたら御の字だな」というような話をしていると、 当然「そのうち死ぬな」と考える。
60くらいになりますと、あと何年くらい生きられるのかな、ということもシリアスではなく爽やかな感じで考えられるんですよ。
「だよねー! 俺たちあと何年生きられるかな、10年かな、70までは生きたいな。そこから先は、プレゼントだよね」って、僕も、同級生と話すんだけれど。
小林武史 × 矢沢永吉

「音楽やってて良かったよね」
なんて話をしたときに、結論から言うとね、死ぬとするじゃないですか。あの世にお金は持っていけないんですよ。それはね、ある時期にものすごくはっきりとわかったんです。
持っていけないのに、なんで人類はずっと、マネー・マーケットを追っかけているのか。マネーゲームをずっとやっていることに、目的があるのならいいんだけれど、ただ増やすことで満足しているのなら、結構もったいない時間を使っているのかもしれない、と思ったの。

僕はそう感じたときに、自分は完璧じゃないかもしれないけれど、少なくとも間違った生き方はしていないかもしれない、と思ったんですよ。気づけてよかった、みたいな。このことに、気づけていない人は結構、いっぱいいると思いますよ。

気づいたから「僕は残りの音楽を含めた人生をどうしていかなくてはいけないのかな」と考えられる。気づくこと、考えられることが大事なんです。小林さんは、それをap bankという形で、基金をやったりする、それが小林さんのひとつの主張ですよね。

僕も、僕なりに、そういうことがわかっているから、どういうふうに生きていけば自分が幸せになれるか、考えなくちゃいけない。いや考えることができる。そういう気持ちになれている自分に気づいたときに「良かったあ」と思いましたね。だから、お金に対しては、僕は小林さんと同じようなことを思っていま すよ、という感じはありますね。
小林 ありがとうございます。あと、ステージでの「スポーツクラブでの出会い」という話はね。本当に、そのまんまなんですよね。

矢沢 僕、ラジオに行ったときにも、その話をしてますもん。「僕は小林さんと、ジムで出会ってね」「ジムですか?」「ジムだよ」って。

小林 ap bank fesで矢沢さんが出たあとに、櫻井がMCで、「どこでどんな出会いがあるかわからない」みたいなことを言っていたんですよ。「その瞬間を、ぼーっと見過ごしてしまう人もいるけれど、そこはワクワクしていく方向に変えていく」って言って、(忌野)清志郎さんのカヴァーを演奏したんですよ。
ひとつのエピソードとしても面白くて、僕としては、本当にあの場で出会えたことを感謝しています。
矢沢 出会ったとき、小林さん、すぐに言いましたよね。
「矢沢さん、ちょっと遊びに来てくださいよ」
「いいよ、行きますよ! 行きましょう」って。
人の出会いはあるもんですよ。僕は、ステージでも言いましたよね「人の出会いはあるもんですね」って。それで、間奏か何かのときに「小林さん、またジムで会おうね!」って、そっと話した(笑)。最高だったですね、また呼んでくださいよ。

小林 本当にありがとうございました。
インタビューを終えて

今の矢沢さんは、他にくらべる人がいないような特別な存在になっているけれど、
それは矢沢さん自身が闘ってきた結果で、強い人だけが持てる優しさが自然にあらわれているせいなんだと思う。

いつも矢沢さんは、こちらが思っている以上の何かを出してくださるんですよね。
リハもそうだったし、ap bank fesの本番も「こんな感じでやれるといいな」と思っていたよりも、圧倒的に上だった。

今日も久しぶりにお会いして「きっといいインタビューになるんじゃないかな」と思っていたけれど、やっぱり期待以上のものを出してくれた。
そういう魅力は、もしかするとメディアを通していると、なかなか気づかないかもしれない。
それがわかるのがライブなのかもしれないな。本当に頭が下がります。

矢沢永吉という人が言いたいことは、いつだって真っ当で、率直で、
そんな矢沢さんが今、活躍しているというのは、僕らにとっても本当にラッキーなんだ、って思いました。

矢沢さん、またぜひap bank fesに遊びにきてください。 最高のパフォーマンスを、またやりましょう。

小林武史
矢沢永吉
矢沢永吉

1949年、広島県生まれ。1972年、キャロルのリーダーとしてデビュー。1975年、「アイ・ラヴ・ユー、OK」でソロデビュー。以来、日本のロックの頂点に立ち続ける。2009年8月、アルバム『ROCK’N’ROLL』をリリース。60歳記念ライヴ“ROCK'N'ROLL IN TOKYO DOME”では、5万人の観客を圧倒した。

(撮影/今津聡子 構成/エコレゾ ウェブ編集部)

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